BookLog リーダーの作法の感想

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2025年2月から5月の期間でリーダーの作法 - O'Reilly Japan を読みました。発行年月日が、2022年06月で長い間積読していましたが、内容がためになったので、印象深い点をまとめておきたいと思います。

ざっくり言うと、ソフトウェア開発者のリーダー、マネージャーとしてこうすべき、あるべきがエッセイ形式でまとめられていて、電車の中で楽しく読めました。
個人的な文脈で転職したばかりで、転職した際のふるまいが書かれている部分が多くありその辺りが印象に残っています。


書籍概要


読書の背景

開発マネージャーの業務に関わりそうな書籍で興味があり、購入していましたが、他の積読本を優先して置き去りにしていました。時期的に技術系の書籍やキャッチアップを優先していており、電車の中で息抜きとして読んでいました。


印象深い点

印象に残った点の引用と、その理由を記載します。

パフォーマンス管理

7章に以下のような記述があります。

7.1 チェックリスト
簡単にわかる方法があります。 最後の「そのギャップに対処するための計測可能で具体的な行動について合意」という項目が最も重要です。なぜなら、従業員があなたの説明に同意しなければ、行動しないからです。

7.2 すべてが変わる 相手が自分の話に耳を傾けてくれなかったりすることはあり得るからです。いよいよパフォーマンス管理をやる?違います。もう一つ、別の方法を試してください。フィードバックを書き留めるのです †1。これは、パフォーマンス管理への第一歩に見えるかもしれませんが、そうではありません。人間同士のあれこれをかたわら傍に置き、批判的な考え方を構成している単語や文章に集中するのです。文字に起こすと、若干形式的にはなりますが、私の経験では、お互いはっきりさせやすくなります。

このあたりは、過去にパフォーマンスに問題があったメンバーに対してどのように対処するのか悩んでいた時期があり、そのメンバーへのフィードバック方法としての1つのプラクティスのように思いました。今後そのような機会がある場合は参考にしたいです。これからだとフィードバックを書き留めた後に、生成AIでレビューをするというプロセスを挟んでいきたいと思いました。

基本的なツールの整理

8章には情報や自分のタスクを整理するために基本的に実施すべきことについて記載されています。

8.1 ブラウザ
必携のブラウザツール(メール、カレンダー、フィードリーダーなど)をお気に入りのブラウザにピン留めしましょう。こうしておけば、いつも使う場所から簡単にアクセスできます。ピン留めするのは5つまでにしましょう。 1週間 使わなければ、ピン留めを外しましょう。私は1年以上、社内メール、カレン ダー、外部メール、 Feedlyの4つで安定しています。

転職でPCや利用ツールが大きく変化するので、パフォーマンスを安定させるためにはとても重要だと感じました。引用はしていないですが、スマートフォンの通知の設定などについての記載もあり、その辺りやれていなかったので今後実施していきたいと思いました。


管理職に就くこと

9章に以下のような記載があります。

9.4 管理職に就くことは昇進ではない 昇進する前に一定期間、高いレベルのパフォーマンスを発揮しているので、新しい仕事の備えが整っている可能性が高いと期待されます。 このような状況では、管理職への備えは十分ではありません。管理職に初めて就くのは、キャリアとしては再出発です。

管理職に初めて就く事について以前、Amazon.co.jp: 増補版 駆け出しマネジャーの成長論-7つの挑戦課題を「科学」する (中公新書ラクレ 722) : 中原 淳: 本を読んだ際に同様のことが書かれていたことを思い出しました。ソフトウェアの技術系のスキルとは別のものが求められるという実感はあるので、印象に残りました。


マネージャーのマネージャー

第II幕の開始直後に以下のような記載があります。

第II幕 Apple:ディレクター しかし、マネージャーのマネージャーという立場になると、仕事がどう進んでいるかについて他のマネージャーの言葉を参考にしなければなりませんでした。この距離が、マネージャーのマネージャーとしての最大の課題です。

個人的にマネージャーのマネージャーというポジションについたことはないのですが、この役割の人と話すときにこのトピックでの苦労話を何度か聞いたことがあって、印象に残りました。


転職時の違和感の取り扱い方

10章に以下のような記載があります。

10.2 壊れ度合い 新入社員へのアドバイスで約束しているのは、違和感のあるものをすべて直すことではなく、対処することです。対処というのは、問題を修正することもありますが、 修正しない場合にそれを正しいと思わなかった理由を明確に説明することも意味します。

10.2 壊れ度合い 驚くことに、 1ヵ月経ってから青テープリストを見直してみると、当時は緊急性が高いと思われていた項目が、まったく重要ではなくなっていることに気付くことがあります。新しい仕事では、一刻一刻で多くを学びます。その環境に関する情報をたくさん集めているのです。チームや自分の役割、そして会社についての自分の理解を日々新たにしているのです。3ヶ月も仕事をすれば、その環境について完璧に理解したとは言えないまでも、 2ヶ月目の終わりに比べれば格段にわかるようになっています 。 青テープリストのすべての項目に対処してください。どれ一つとってもほったらかしにしてはいけません。問題を解決する計画を立てているのであれば、その方法と時期を説明してください。修正するつもりがないのなら、その理由を説明してください。

この部分は、まさに転職直後の状況なので違和感をどのように扱うか悩んでいたため、とくに印象に残りました。
1か月時点では課題と思っていたものが、ヒアリングを進めるにつれて課題ではなくなる場合があります。また、業務の理解が進むと別のものが課題になることもあります。一方で、変わらず課題のまま残るものもあります。 わたしは青テープリストを作成していなかったため、今後同様のものを作成することを検討しても良いかなと思いました。

過去の仕事の繋がりについて

12章に以下のような記載があります。

12.3 発見・理解・歓喜
「マストリスト」の使い道は2つあります。まず、自分のチームに新しい仕事が舞い込んだ時、リストを開いて、条件に合いそうな人がいないかを確認します。そして、友好的なメールを送ります。「こんにちは、お元気ですか?ある仕事を引き受けたので、また一緒に仕事をしたいと思います。コーヒーでもいかがでしょう?」最近話をしていないようなら、その仕事に興味があるかどうかにかかわらず、コー ヒーを飲むことが多いです。友達だからです。

12.3 発見・理解・歓喜 マストリストの2つ目の使い道は、毎月のレビューです。自分のチームで募集をするかどうかにかかわらず、 1カ月に1度くらいの割合で、このリストを見直し、過去 90日間に誰と話していないかを確認します。いい人がいましたか?メールを送りましょう。「こんにちは。お元気ですか?コーヒーでもいかがでしょう?」繰り返しになりますが、声をかけた人が、転職に興味を持つことはほとんどありません。 ただ、運よく仕事を探しているようなことがあれば、また一緒に仕事をするために何でもやりましょう。

わたしは3社目で1社目の繋がりが、最近なくなってきてしまっているので、たまに対話する機会を持つのは大事だなという感覚を持ちました。リファラル入社をお願いするということはしなくても、近況の対話で問題が解決することもあるかなと思います。 また、仕事上のつながりでなくても、コミュニティでのゆるい繋がりから仕事への声かけにつながる場合もあったりしそうには思いました。

手厳しいことを言う能力

15.1 頭の中の声 「手厳しいことを言う」能力は、「我慢の限界まで任せる」能力の次に大切なものです。私がこれまでに経験した人災の大半は、「言いにくいことを言わない」ことにしたのが原因です。

誰かにフィードバックをする、されるのは難しいが重要な行為と認識しています。中原淳さんの書籍 フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 (PHPビジネス新書) | 中原 淳 |本 | 通販 | Amazon を思い出したので、また読んでみようかなと思いました。

3と10の法則

16章に以下の参考記事が紹介されています。

16.2 ゲームスタート 「3と10の法則」(https://oreil.ly/drFz6)

3人、10人、30人、100人と組織が大きくなるごとに、コミュニケーション、給与計算、経理などの会社の仕組みのすべてが変わる(変えていく必要があるという内容)で、これは個人的な感覚と一致していそうに思いました。300人→1000人くらいになると、このあたりのルール設計の専門部署がコーポレート部門にあってそこが1年中議論していそうというイメージ(悪いイメージではなく、ルール変更に時間がかかる)を持ちました。

小さな失敗から学べるようにする

16章に失敗についての記載があります。

16.3 悲しいほど確実 大失敗は、やってしまったときに注目を集めるものです。大失敗した後に変革を起こすのは比較的簡単です。なぜなら、誰もがまばたきもせず空を見上げ、もう一度落ちて来ないか備えているからです。大きな失敗から学ぶことは難しいことではありません。すべての失敗から規律正しく学ぶためには、思慮深い作業が必要です。

16.4 差別化要因としての失敗 まず間違いなく、チームの規模が一定数になると、これらの失敗が集中します。失敗が急増するのを見て警戒し、お互いに心配し始め、恐怖のフィードバックループが生まれます。こうしたことは何があっても起こることです。成長するビジネスにはつきもののコストなのです。

チームの規模が一定数になると、これらの失敗が集中します。 はルールの不足からくるものと想像しました。
小さな失敗から学ぶために、ふりかえり|レトロスペクティブが重要なのかなとも思えました。

ミーティング

18章は、分散ミーティングの基礎知識というタイトルで、ミーティングのTipsが記載されています。

18.2 「人の多い」ミーティング
まずは、最も骨が折れ、最もコストがかかり、改善の余地が最もある場所に 焦点を当ててみましょう。それは、「多人数」のミーティングです。 多人数のミーティングは2箇所で行われます。それが、ホストと分散地域です。ホ ストはメンバーの大半がいる場所であり、分散地域はオンラインで繋ぐ相手がいる場 所です。この種のミーティングのルール(https://oreil.ly/qkL1c)については、すでに書い た通りです。その記事を読んで、次のような課題を考えてみてください。「どうすれば、ミーティングの参加者全員が同じ体験をして、同じ価値を生み出せるようになるだろう?」

18.3 たいした違いはない ホワイトボードをみんなで見る時には、分散メンバーがホワイトボードを見られるかどうか(もう一度)確認してください。これも監視係の大事な仕事です。

18.3 たいした違いはない ミーティング後の注意事項 ●初めて参加するメンバーがいたり、会議室を初めて使う場合には、どうだったか全員に聞きましょう。問題点を直してください。 ●分散メンバーの中には、ミーティング中に音が途切れる人が出てくるかもしれません。会議室のオーディオを買い替えましょう。

コロナ禍で、分散ミーティングの数が増えて、ホスト側にいると分散地域での状況がよくわからないという状況が発生します。
分散地域側へ定期的にミーティングの状態がどうだったのか?を教えてもらう。というのは良いプラクティスに思えました。
会議室のオーディオのクオリティは分散ミーティングを前提とするととても重要でお金をかけるべきところに思います。
※前職時代にこのあたりで苦労した思い出がある。

「前の会社のことは言うな。」

19章に以下の言葉が記載されています。

19章 ゼロから作りたい病 「前の会社のことは言うな。」

前職の在籍年月が長ければ長いほどこうなるのかもしれないですません。自分自身も「前職では。。」の枕詞をつけて意見を述べる時があり、利用時のコンテキストによるのかもしれませんが、用法用量を守って正しく使うのは重要に思いました。この言葉を言う状況が起こらないのがもっとも幸せには思います。

質問しないで行動するとき

19章に以下のような記載があります。

19.2 イノベーションを起こすべきときと、コツコツ改善すべきとき
急成長している革新的な企業で起きることはどんなことでも、このイノベーションの原動力で処理しなさい、というわけではありません。そんなことをしたら、貴重な勢いや生産性を失ってしまうでしょう。このレベルの注意を払わなければならない重要な意思決定はほんの一握りで、それ以外は元々ある技術に頼って構いません。私はただ行動するだけです。質問もしません。合意形成もしません。ただやるだけです 。

19.3 いちいち質問せずに行動する 最初の90日は危険な時期です。第一印象はなかなか変えられません。最初の数ヶ月間で、方向性が決まります。リーダーとしてのシンプルな言動が、チームや組織全体に大きく響きます。

文脈的に、調整して進めるべきタスクとそうではないものもある、という話かなと理解しました。自分だけがある経験があり、社内にその領域の有識者があまり存在しないタスクについては調整しながら進めるよりも、1人でやった方が効率が良く組織のためになるものがあるのかもしれません。リスクもあるため、そのような形で進めるかどうかを社内の人間に相談してから実行するべきだと考えました。

文化の大半はすでに構築されていて、文化は大きく変わらない

21章からの引用になります。

21.2 ストーリーを聞く 文化をどう構築するかについて語る人はたくさんいますが、文化の大半はすでに構築されています。善意から新しい価値観を壁に貼り出すようなことを何度やっても、創業チームが会社を運営している間は文化が大きく変わることはありません。本当に。

組織文化変えるのたいへんという理解をしました。
壁に貼り出した言葉よりも、ストーリーを語るなどの方が効果があると言うのも経験的に何か共感を覚えました。
望ましい行動に対しての表彰制度があると、その辺りが強化されるのかもしれないとも思いました。

評価基準が必要になるとき

23章からの引用になります。

23.2 2つの平等なキャリアパス キャリアパスが必要になるのは、キャリアアップのための評価基準が必要になるくらいエンジニアが増えたときからです。良かれと思った人たちがこのキャリアパスを定義します。素晴らしい!あなたの会社にはキャリアパスがあるということです。この新しく定義されたキャリアパスで、誰がどこに行くかを決めるのは誰でしょう?みんなのレベルはどれくらいでしょう?誰が「シニア」でしょう?通常、 何らかの形でマネージャーになっている人がこれらを決定します。

評価基準の作成にはとても時間がかかります。そのため、必要になるまで作らないという判断も重要だと感じました。

びっくりさせるマネージャー

26章からの引用になります。

26.3 びっくりさせない そのマネージャーは古典的なマネジメント手法を数多く行っていました。一日中何をしているのかわかりませんでしたし、 1on1の予定を組むこともほとんどなく、組んだとしても予告せずになくなることがよくありました。 そして、いざ会議室で捕まえて、重要な問題を突きつけると、その時に思いついた結論に飛びついて、それを事実として述べました

過去にこのタイプのマネージャーの人にあった記憶があります。2010年代くらいまではほとんどのマネージャーがこの古典的マネジメント手法だったのではないかと思いました。個人的に現在(2025年6月)でも、実質マネージャーの立場だが、形式上そうではないというケースの場合、この古典的なマネジメントスタイルになっていると自覚しました。理想的なスタイルに近づけるために、具体的な改善策を検討しようと思います。


今後の行動への影響

久しぶりにマネジメント関連の書籍を読んだ結果面白かったので、この辺りの書籍を購入して読み進めていきたいと思いました。
オライリー縛りだと、個人的には以下のどちらかを読んでみたい気持ちがあります。

以上です。